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実務ディスカッション | 不可抗力制度と不可抗力条項の葛藤
Wed Aug 19 14:44:00 CST 2020 発表者:华诚小編

実務ディスカッション | 不可抗力制度と不可抗力条項の葛藤

上海市華誠律師事務所

徐頤 パートナー弁護士

最近公布されたがまだ発効していない『民法典』第180条の規定によれば、「不可抗力のため民事義務を履行できない場合は、民事責任を負わない。法律に別途規定がある場合は、その規定に従う。不可抗力とは、予見できない、回避できない且つ克服できない客観的状況をいう。」『民法典』は法律条文において不可抗力の具体的な状況を列挙・記述しておらず、「予見できない」、「回避できない」且つ「克服できない」という三つの要素で不可抗力の限界を規定し、法定の不可抗力制度を構築したのである。これは比較的柔軟な対処方法ではあるが、実務においては前記の認定要素は抽象的すぎるため、応用しにくい場合がしばしばある。そのため、契約の締結者は民商事契約において不可抗力条項を設置して約定を行い、不可抗力の具体的な状況と範囲、および相応の法的効果および救済措置を明確にする必要がある。

実務において免れない問題として、契約締結者の不可抗力制度に対する認知と理解によっても、契約締結者が不可抗な状況の想定を行うという客観的なニーズをふまえても、契約締結者は意思自治に基づき約定した不可抗力条項が内容的に不可抗力制度と完全に一致するとは保証できない。すなわち、不可抗力の法定範囲を縮小したり超越したりする可能性がある。もし契約の履行過程において、不可抗力条項で約定された状況が発生した場合、同条項の効力は常に原・被告の主な争点となるため、精査と議論が必要である。

まず考慮すべきなのは、中国の現行法律において不可抗力に関する規定は効力性の強制的規定であるか否か、ということである。もし不可抗力規定が効力性の強制的規定に属するとすれば、双方の意思自治を排除し、不可抗力条項の効力に影響を及ぼし、契約における関連の約定を全部または一部無効にする。もし効力性の強制的規定に属さないとすれば、不可抗力条項で約定された不可抗力の状況、救済、法的効果が法律規定に合致しなくても、不可抗力の適用を主張する側は自身の責任を免除すべく、契約の約定を適用することができる。2019年の『全国の裁判所における民商事審判作業会議議事録』(『九民紀要』)における指導的意見によれば、強制的規定を識別する際、強制的規定が保護する法益の類型、違法行為の法的効果および取引安全保護などの要素を考慮した上でその性格を認定すべきである。上記の判定基準をふまえると、筆者は次のように考えたい。不可抗力制度が保護する法益は個人の財産権益であり、これは社会の公共利益に属さない。取引安全保護の視点からすると、これは平等な民事主体の間で、取引のリスク配分を事前に行う措置であり、いかなる違法性も存在ないため、不可抗力規定は効力性の強制的規定に属さないと認定し、当事者の自主的な調整や放棄を許容すべきである。


次に、司法実務からすると、裁判所は不可抗力条項の内容に対して実質的審査を行う傾向にあり、すなわち、縮小型の不可抗力条項と拡張型の不可抗力条項に対して態度が異なるようである。最高人民法院が審理した卓盈豊製衣紡織(中山)有限公司と広東長城建設集団有限公司の建築工事施工契約紛争において、最高人民法院は、不可抗力は法定の免責事由であり、当事者間の例外の定めにより免除されることがない、と考えた。広州市中級人民法院が審理した人民財産保険公司と中国物資儲運広州公司の保険者代位求償権紛争においては、広州市中級人民法院は次のように考えた。不可抗力は法定の免責条項であり、契約において不可抗力条項が約定されているか否かは、法律規定の直接の援用に影響を及ぼさない。約定された不可抗力条項が法定範囲より狭い場合、当事者は依然として法律規定を援用して免責を主張することができる。また、当事者は不可抗力を免責事由から排除するように約定してもいけない。上記の判例をふまえると、次のように考える理由があろう。裁判所は縮小型の不可抗力条項に対して一般的に否定的な立場にあり、すなわち、もし不可抗力条項が不可抗力制度の適用を完全に排除していたり、一部の不可抗力の具体的な状況または法的効果の排除を約定していたりする場合、当該不可抗力条項の効力は否定される。逆に、拡張型の不可抗力条項については、もし契約締結者が約定した不可抗力条項における不可抗力の状況が法定の不可抗力の範囲より広い場合、その超えた部分は不可抗力の状況に該当しないが、双方の約定した免責事由と見做し、免責条項の定めに応じてその効力を判断することができる。


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