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企業の職務発明報奨制度の構想について 
Mon Mar 05 13:07:00 CST 2018 発表者:华诚小編 ファイルをダウンロードしてないPDF

企業の職務発明報奨制度の構想について

黄剣国 曹衣暉


2015年、国務院は「国務院による新情勢における知的財産権強国の建設の加速に関する若干の意見」を公布し、職務発明制度について更なる役割を定め、職務発明制度の改善を強調した。このことから、職務発明制度は日増しに企業が自身の科学技術の競争力を向上させる重要なツールとなってきていることが分かる。しかし、一部の企業ではまだ職務発明の報奨制度について詳細で効果的な規定を作っていないため、頻繁に職務発明紛争を招いていることは否定できない。従って、企業の職務発明報奨制度の改善は企業がこのような法的リスクを回避する上で重要な意義を持っている。

一、企業が構築した職務発明報奨制度の役割

まず、企業が職務発明報奨制度を構築することは、職務発明に関わる権利義務関係の確定に役立つ。発明者が技術の研究開発を行う時には、一般的には、同人が持っている権利、享受すべき奨励及び報酬について知っているわけではなく、企業は規則制度の制定により、発明者が獲得すべき報奨の金額、方式、時間を当人に明確にさせ、研究開発を行う前に発明者と権利・義務を明確にすることができる。これによりある程度不要な法的紛争を効果的に避けられる。

次に、完全に整った職務発明報奨制度は、企業内部の職務発明報奨の基準の統一に役立つ。実務においては、企業が解決すべき大きな問題は、企業が同等の創造的な価値を持った各発明について、いかに同一の基準の報奨を獲得させるかということである。発明の質及び発生した効果・収益が高くなるほど、発明者が享受すべき報奨も高くなる。それでは、質及び効果・収益の高さをいかに計るかには、企業が一定の基準を制定して規制を加える必要がある。

三つ目に、職務発明報奨に関する紛争を減らすのに役立つ。ここ数年、職務発明報奨紛争は増加傾向にあるが、原因の一部は職務発明が特許において占める割合が明らかに上昇していることで、2004年には職務発明の割合が40%を占めていたが、2015年には70%に達し、全体としての職務発明の割合の上昇が紛争を招くことは避けられない。その一方で、一部の企業には完全な職務発明報奨制度が足りておらず、また、各種の民営企業、外資企業の数が増えている。元々国有企業の従業員の就職は概ね終身雇用であるため、企業内で職務発明紛争が発生する確率は比較的低かったが、現在は企業の性質が日に日に多元化し、従業員の流動性が増しているため、従業員が離職してから紛争が発生する可能性はある。そのため、企業自身が職務発明の規則制度を制定して、企業と発明者の間である程度予期している場合には、将来報奨額の争議によって発生する訴訟疲弊を効果的に避けることができる。

四つ目に、争議発生時に法定の報奨支給基準の適用を避けるのに役立つ。企業自身と発明者が約定した報奨金額は法定の基準を下回ってもよい。このような約定が存在した場合には、裁判所がこの種の報奨紛争を審理する時に法定基準を直接採用するという状況を効果的に避けられる。その理由は、法定基準は現在、最低金額のみを規定しているが、企業が実際に特許権を使用して取得した収益が極めて高かった場合、法定基準を採用して発明者に支払う必要のある報酬は同じく高いからである。

最後に、企業の知的財産権保護の制度の構築に役立つ。この種の制度には企業が自身の合法的権益及び研究開発段階における発明者の権益を保護することが含まれており、完全な職務発明報奨制度の構築は発明者の発明創造に対する積極性を向上させられる。これ企業の利益に対する間接的な保護でもある。

二、職務報奨関連の法律規定

1. 職務発明の形式的特徴

まず、職務発明関連の法律制度は「中華人民共和国特許法」及び「中華人民共和国特許法実施細則」によって規制されており、同制度に含まれる対象は合計3種類で、意匠、実用新案及び発明である。報奨に関わる客体が技術ノウハウまたは営業秘密の部分であった場合は、職務技術成果報奨制度によって調整されるが、これと職務発明報奨制度には一定の区別が存在する。しかし、上記の技術または秘密が後で特許出願に成功した場合には、職務発明報奨制度が適用される。

次に、職務発明は中国境内における発明の状態でなければならず、これには二層の意味が含まれる。一、職務発明が中国境内で完成され、かつ中国で出願に成功したものである。二、職務発明が中国で完成され、かつ外国で出願に成功したものである。 

2. 職務発明報奨の権利者及び義務者

職務発明の権利者は発明者及び考案者で、即ち、職務発明創造の実質的な特徴について創造的な貢献をした者であり、よって、企業の管理職、職務発明に協力を提供した補助者はいずれも職務発明の権利者ではない。

法律では、職務発明とは、本主体の任務を執行し、または主に本主体の物質的、技術的条件を利用して完成させた発明創造であり、そのため報奨については、特許権を付与された雇主が当然の義務を持つと規定されている。しかし、実務においては、権利を付与された者または主体が雇主ではない状況に遭遇するが、裁判所はこのような特別な案例について他の基準によって認定する可能性がある。

3. 報奨のタイプ

報奨には奨励金と報酬という二つの部分の内容が含まれている。奨励金支給の前提は、発明に特許権が付与されていることである。報酬の支給は特許権の使用を条件として、上記の実施には三層の意味が含まれており、自発的に特許権を使用すること、他人に特許権の使用を許諾すること及び特許権を譲渡することである。この三種類の具体的な行為のうち、いずれかひとつさえ実施すれば、発明者に相応の報酬を支給する必要がある。

4. 報奨の支給基準 

報奨の支給基準には約定及び法定という二種類の基準が含まれている。約定の基準には二つの形式があり、一つ目は企業が規則制度において規定を作るというもの、二つ目は企業が発明者と具体的な契約を締結するというもので、即ち、契約による約定である。

法定の基準においては、奨励金の支給基準は、発明特許の場合が3,000元を下回らず、意匠及び実用新案の場合が1,000元を下回らないというものである。報酬の支給基準は、自発的に特許権を使用するという条件においては、発明特許及び実用新案は毎年の営業利益の2%で、意匠は毎年の営業利益の0.2%である。他人に特許権の使用を許諾するという条件においては、職務発明の形式は三種類のいずれも使用費用の10%である。特許権を譲渡するという条件においては、中国の法律では当該報酬制度について明文化して規定していないが、特許権の譲渡は性質上、他人に使用を許諾することと類似しているため、司法実務において、特許権譲渡の報酬基準は他人に特許権の使用を許諾する際の基準を採用している。即ち、譲渡費用の10%を支給するということである。

三、職務発明創造報奨制度の構想において考慮する要素

まず、企業に職務発明報奨制度を制定すべきかどうかは、総合的に自身の状況を考慮する必要がある。大手研究開発企業は完全な職務発明報奨制度を構築しなければならないが、中小のサービス型企業または販売型企業は、企業自身が大量の技術開発の成果を持っていないため、職務発明報奨制度を構築せずに、発明者との個別契約にて約定することを選択することができる。

次に、企業が職務発明報奨制度を制定するプロセスは合法的なものでなければならない。裁判所が企業の規則制度の適法性を審査する時に、プロセスの適法性が割と大きな割合を占める。最も厳しい制定プロセスに照らした場合、規則制度は会社法及び労働法の規定に符合する必要がある。実務においては、裁判所は規則制度の適法性を考量する時に、関連人員の意見を聴き取って開示、公開をやり遂げるよう企業に要求し、企業の職務発明報酬制度の制定過程において上記のプロセスが存在した場合、合法的だと認定することができる。

三つ目に、制度の内容の構想は詳細で具体的なものでなければならない。まず、企業が制定した報奨制度には遡及力があるかどうか。この問題を明らかにしていない場合、通常、当該制度は将来の職務発明行為だけを規範化すると認定される。次に、報奨制度は営業秘密またはその他の知的財産権の権利をカバーしているかどうか。三つ目に、報奨の支給プロセス、支給方式、及び具体的な金額が明確に規定されている必要がある。そのうち、支払方式は現金に限らなくてもよく、株式ひいては出国して研修を受ける機会も報奨の内容にすることができる。支給の金額については、奨励金の金額は通常、固定の金額を使用し、報酬の金額についても固定の金額を使用するよう勧める。しかし、企業は固定金額の具体的な数値を確定する時、特許権の使用によって獲得した収益のそれぞれの状況によって金額の基準を分類して制定し、または報酬金額を最終的に計算するために一定の計算式を制定する必要がある。注意すべき点としては、計算式を採用した場合、裁判所は当該計算式が合法的で合理的なものであるかどうかを判断する時に、企業に相応の証拠を提供して証明するよう要求することが挙げられる。

最後に、企業がいかに職務発明の報奨制度を制定しようとも、発明者本人が法律に則って保有する合法的権益を無視するべきではない。発明者は同人の発明をもって相応の報酬を獲得する権利を有する。これは間違いないことで、企業がこのような権利を排除する約定をしてはならない。


上記の内容をまとめると、職務発明の報奨制度は企業が自身の権益を保護することに重要な役割を持っている。企業が規範的で効果的な規則制度を制定できるかどうかは、同社が知的財産権発展戦略を貫く重要な要素である。

(本稿は、黄剣国弁護士が2017年第5回中国(上海)国際技術輸出入交易会で行った講演の録音に基づき整理して文書化したものである。)

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